大学時代、学部の卒業旅行で軽音サークルの仲間と10日間イタリアに行った。
確か「学旅」みたいなツアーパックで、他所の大学と一緒になってローマ・ベネチア・フィレンツェ・ミラノって代表的なイタリアの都市を回った。特にツアーの後半、他の女子大の子たちと仲良くなれたのは究極に楽しかった。
街には歴史的建造物がたくさんある観光地だったけど、女性の警官が歩きタバコ&ポイ捨てするシンボリックな光景宜しく、汚いし治安も良くなかったように思う。
日本には無い、クソでかサイズのティラミスとか、とにかくチーズのクセが凄いピザ。アホな大学の陰キャラとワイン飲み対決をして丸一日二日酔いで棒に振ったこともあった。欲望のままに食った。
ホテルに、生ハムのブロックを丸ごと1個買って持ち込んだ。僕はてっきりそのままガブっと齧りつける位の歯応えだと思っていたのだけれど、いざ噛みつくと石のように固い。前歯が折れるレベル。
結構な値段もしたので困っていた所、学部の仲間に唯一混ざって卒業旅行に参加していた大学院の先輩がドヤ顔をして『ナイフ、あるよ。』とカバンから取り出した。
そのナイフは “盗賊の七つ道具” みたいなマルチツールで、その中の一つに割と刃渡りが長く、かつ切れ味の鋭いナイフが備わっていた。
『ちなみにコレ、幾らだと思う?』
そのマルチツールの値段クイズを出された。高くて¥6,000位かな‥と思って回答したが、こちらもドヤ顔で『¥50,000だよ。』と言われた。
学生の身分には似合わない、¥50,000のナイフ。こんな生ハムをカットする場面で大活躍するとは、感謝。
薄く切られた生ハムをつまみに、みんなでワインを楽しんだ。
その翌日の行先は、バチカン市国にあるバチカン美術館だった。
バチカン美術館の入口は観光客で大行列。
大行列に並んでいると、ガタイの良い女性ガードマンが検問で手荷物検査を実施していた。
僕のカバンも雑にチェックされ、そこにライターが入っているのを見つけると、それを手に取って即座にバカでかいゴミ箱へ放り投げられた。
すると次の瞬間、大学院の先輩のカバンも開けられ、そこに入っていた¥50,000のマルチツールも一瞬でデカいゴミ箱へ放り投げられた。
『あーーーっ!!』
ちょっとスローに見えた。
あんなに昨日、ドヤ顔で出してきて、活躍していた¥50,000のお気に入りマルチツールが‥。
目の前で数多の押収された物品の山の中に混ざって行った。そして先輩の残念そうな表情。
爆笑する我々一同。
バチカン美術館の検問が、一番楽しかった。
【あとがき】
こちらも完全にノンフィクション。
あと、その先輩は他でも色々かっこつけがちで、ワンチャン狙っていたのか、やたら旅を共にしていた女子たちにアピールして物凄く嫌われるという災難に続く災難に遭われていました。
語呂合わせについては、バチカン美術館の “バチ” を美術館の “8” と併せて覚えて下さいませ。